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2014.12
29
12:27

親密な、写真(森栄喜さん_アセンブリーアワー講演会)

アセンブリーアワー講演会のゲストとして、写真家の森栄喜さんをお招きしました。

森さんは、自身の恋人や友人との日常を記録した写真集「intimacy」で第39回木村伊兵衛写真賞を受賞。雑誌や展覧会で作品発表を続けるほか、同性婚をテーマに写真と映像で訴えるプロジェクト「Wedding Politics」など、身近な被写体との関係をテーマにした作品で知られています。
(今年のセイカの大学案内パンフレットでは、卒業生を撮影していただきました。)

「親密な、写真」と題した講演会では、写真史や視覚文化論を専門分野とするデザイン学部の佐藤守弘先生が聞き手として、作品を読み解きながらお話しいただきました。

受賞作「intimacy」は、森さんが恋人と出会ってから過ごした1年間を記録した写真集。
日々の風景を毎日スナップ的に撮り続けるプロジェクトで、多くが実際に住んでいる部屋やその近所で撮影されており、なかには光が強すぎて白く飛んでいたり、ボケていたり、特別に配慮して撮られた写真には見えません。

「(作品の完成度という観点で)1枚1枚を見れば、写真としては恥ずかしいものもある。空の写真も決してドラマティックな美しさはないけれど、あのとき、あの場所で2人で見た空は特別なもの。切り取りたかった」と、森さんは自身の作品について語ります。

恋人と過ごす何気ない時間が特別なものであり、美しいと感じること。作為のない写真からは、森さんが同性愛者であるという背景を感じさせない、結晶のようにすくいあげられた親密さが写されていると感じました。

「友達のプライベートな写真を見ても面白くないけど、なぜ森さんの写真をおもしろいと感じるのか。それは、2人の関係をそのまま写しとっているからではないか」と、佐藤先生は指摘します。
恋人との関係を、そのまま写しとる。でも、それは言葉にするほどかんたんなものではありません。

森さんと恋人によって始められた同姓婚の実現を訴えるプロジェクト「Wedding Politics」は、オリジナルのコスチュームを制作し、国会議事堂前や神社、街中などで、2人のセルフポートレートを撮影するというもの。
東京の巣鴨で行われたプロジェクトの映像には、白い衣服を装った2人が、道行く人にカメラを渡し撮影してもらう様子が次々に映し出されます。

「親密なテリトリーが移動した痕跡のような作品」

森さんがそう表現したように、親密でありながらオープンな2人の空間が、他者を巻き込みながら移動した記録が写真となって残されます。
日本で同性婚が法的に整うまで続けられるというこのプロジェクトは、他者と出来事を共有することで、社会的に認められない自分たちの結婚について多くの人に知ってもらうことを目的にしています。

「写真がメディウムとなり、人と人の関係、人と場所の関係を表す“関係の写真”とも言える」と佐藤先生は評されていました。

そして、最近取り組んだ作品として、香港で撮影した作品「HK Obscura」を紹介。
身近な存在との関係性をテーマにしてきた森さんにとって、初めて訪れた香港は縁もなく関係のない都市。
そんな場所でいかにして自身の作品と言える写真を撮ることができるのかを考えたそう。
そこで、森さんはカメラオブスキュラ(カメラの起源となるもので、小さな穴から取り込んだ光を鏡で反射して像を写し出す装置)の原理を用いて、自分の手にもった鏡に街の男性を写し、その鏡を街の風景ととも写真に収めるという手法をとりました。
森さん自身がカメラの一部となることで、撮影する対象は森さんの内部に取り込まれ、その距離が一気に縮まります。

制作において未知な領域に取り組むとき、いかにして自分の表現をそこに立ち上げるのか。これは、あらゆる表現に関わる人にとって創作のヒントとなる話です。

対象と自分とを重ね、その関係性を記録したものがみる人の心に響く作品になる。
小さな差異を並べ立てたり、異質なものに対する抵抗ばかりが目立つこの社会において、自分と異なるものとの接点を自然体で見出そうとするその姿勢は、未来に対する希望や人間の可能性を感じさせてくれました。

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