養老孟司さんが語る「動くことと考えること」

Date_ 2013.10.28 20:53

「バカの壁」などの著書で知られる解剖学者・養老孟司さんの講演会が
先週開催されました。


対談者は人文学部のウスビ・サコ先生
木野通信の対談がきっかけで今回の講演会が実現しました。
ちなみに、養老さんは京都国際マンガミュージアムの館長でもあり、
セイカとはつながりの深い方なのです。

講演会のテーマは「動くことと考えること」。
セイカの人文学部の学び方を軸に、養老さんの経験を交えながら、
学問とは何か、教養とは何かについてお話しいただきました。


「解剖とは人体を言葉に置き換えることなんです。」と、冒頭から引き込まれる話。
かつてばらばらに呼ばれていた身体の部位の名称が解剖学によって統一された、
つまり、人体というわけのわからなかったものが言語化されて共有されたということ。
人間とそれを取り巻く世界を言語化していくのは人文学部も同じです。

養老さんが大学で解剖を学びはじめたとき、死体を扱うことから
いったい何を学んだらいいのか、わからなかったそうです。
でも、わからないからこそ、学びながらいろんなことを考える。
自分にとって死んだ人がどういう存在であるのか。
なぜ日本とほかの国で死んだ人の扱い方が異なるのか。
死んだ人と生きている人の表情の違いについて考えることで、
ふだん自分が人とどのように接しているのかに気づいたり。
そうやって、どんどん思考の世界が広がっていったことが、
楽しそうにエピソードを話す養老さんから伝わってきました。

いま大学で学んでいる学生への言葉として
「自分にとって知らないことを見つけることが“発見”なんです。
だから嬉しくなる。他人が知っていようがいまいが関係ない。
僕が続けている虫採りだってそうです。
行ってみないと何が採れるかわからない。
“一歩出る”ということ。それが勇気を出すということ」とも。

特別な人間でなくていい。特別な発見でなくていい。
一歩外に出ること、動くことによって発見がある。

セイカの人文学部が大切にしている“行動して考える”
その身体的な学び方をわかりやすく話していただけました。
こんなに楽しそうに話されると、一歩出てみようかと、
学びたい欲求がうずうずしてきた人も多かったんじゃないかな。
“背中を押す”とはこういうことだと感心しきりでした。

高見島に行ってきました。(瀬戸内国際芸術祭2013)後編

Date_ 2013.10.26 17:30

高見島に行ってきました。(瀬戸内国際芸術祭2013)前編」の続きです。


藤野裕美子さん(大学院芸術研究科博士前期課程修了)の作品
「肩の情―高見島―」。
島の住人のほとんど全員にあたる、30人のポートレイトを描きました。


モデルの身体の向きや描かれている部分も様々。
共通しているのは、どこか一部が画面から切れてしまっているところですが、
それが逆にその人物の特徴や個性を引き立たてているように感じます。
「最初は恥ずかしがって嫌がる方もいましたが、ほかの人を描いた絵を見てもらったり、
何度か話したりするうちに、描いてほしいと言ってもらえてうれしかった」と藤野さん。
制作をとおして、高見島の人たちと交流を深めたエピソードを楽しそうに話してくれました。


若林亮さん(大学院芸術研究科博士前期課程修了)の「望郷の火」。
古い瓦が積み上げられ、煙突状の窯の中で木材が激しく燃やされています。
瓦と木材は、この島にある使われなくなって崩れた家の廃材が使われており、
会期中の土日祝日の夕方、高見島を出る最後の船を見送る時間にあわせて
かがり火を焚くという作品です。


「芸術祭で島を訪れた人たちを送るのと同時に、行き交う船や、
島を出て暮らすかつての住人の方たちの道しるべになるように」
と、懸命に火を焚く若林さん。
日が沈むにつれ辺りを明るく照らします。そして出航の時間に。


港を離れゆく船に向かって大きく手を振る若林さんの姿。
今は失われてしまった、私たちにとって大事な何かを
この作品が回復してくれた気がしました。

「瀬戸内国際芸術祭2013」の会期は、11月4日(月・祝)まで。
高見島には、このほかにも紹介しきれなかった作品があります。
会期は残りわずかですが、ぜひ現地に足を運んでみてください。

ちなみに豊島では、3年前の開催時に制作された
塩田千春さん(洋画分野専攻卒業)の作品「遠い記憶」が展示されています。


木製建具でつくられたトンネルが、この地の人々の記憶をつなぎます。

じつはこの作品、建物の老朽化のため今年を最後に撤去されることに。
豊島に行かれた方はお見逃しなく。

高見島に行ってきました。(瀬戸内国際芸術祭2013)前編

Date_ 2013.10.26 15:29

瀬戸内海の島々を舞台に、3年に一度開催される
瀬戸内国際芸術祭2013」に京都精華大学の在学生と卒業生、
教員らが「高見島プロジェクト」として参加しています。

会場は香川県にある高見島。
多度津という港から船で25分ほどの小さな島ですが、
島に渡る船も作品になっていました。


立体造形コース非常勤講師の西山美な子先生の作品
「新なぎさ号・キュート・アップ作戦」。
ピンクでキュートなフェリーが港に訪れた人を迎えます。


高見島に着くと出迎えてくれる無数の黄色い旗は、
テキスタイルコースの教員と学生たちによるプロジェクト
「畏敬・よみがえる失われたかたち」。
多度津町の園児、小中学生たちがメッセージを描いた
およそ3000枚もの旗が展示されています。


「友情不滅」「夢にむかって進撃せよ!」「バレーLOVE」、、、
自分が幼いころに夢中になったり、大事にしていたこと、
記憶の片隅に眠っていたその時々の想いがよみがえります。


こちらは、中島伽耶子さん(洋画コース卒業)の「うつりかわりの家」。
一見ふつうの民家ですが、中に入るとグリッド状になった無数の光源が。


よく見ると、壁と屋根に空けられた穴にアクリルの円柱が埋め込まれており、
穴をとおった外の光が増幅されて中に届く仕組みになっていました。
古い家屋に堆積した時間や記憶、そんな目に見えないものに光をあてるかのようで、
神聖さが漂う空間が、静かに広がっています。


こちらは立体造形コースの吉野央子先生の作品「蛸の家」。
木彫の蛸たちが座卓や蛸壺から現れてゆったりと過ごしています。
漁業が生活の基盤であり蛸壺漁も行われる高見島では、蛸は身近な存在。
蛸が陸に上がって、島の住人と同じように家で生活してみたら、、、
こんな風にけっこうしっくりくるのかもしれません。
蛸との共生が現実とは異なるかたちで表現されていて楽しい作品。


「蛸の家」からの眺め。青い海が広がっています。
蛸にとって陸から眺める海はどのように映るんだろう、、、と
想像してしまいました。

中島さんや吉野先生の作品が展示された集落は山の斜面にあるため、
急な階段を上ったり下ったりして会場を巡ることになります。
段差も幅も不揃いな階段に足元を気にしつつ、
ひっそりと建ち並ぶ空き家や木々の間を進んでいると、
未知の作品を求めて探検をしているような感覚になってわくわくしてきます。
高見島ならではの楽しみです。

そして後編に続く。

しかおのつぶやき